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愉快なニーベルンゲン

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愉快なニーベルンゲン Die lustigen Nibelungen

フォルクスオーパーの看板

愉快なニーベルンゲン」(Die lustigen Nibelungen)は、オスカー・シュトラウスが初期に作曲した作品です。題名をご覧になるとわかるようにリヒャルト・ワーグナーの超大作「ニーベルングの指輪」のパロディ・オペレッタです。そのため、オリジナルの「ニーベルングの指輪」を知っていると、笑える場面がたくさんあります。1904年にウィーンのカール劇場で初演されました。

最近はほとんど上演されなくなった作品ですが、2008/2009シーズンからフォルクスオーパーで上演されています。ちなみに、このシーズン、ウィーン国立歌劇場では、大々的に「ニーベルングの指輪」がチクルスで上演されました。どうやら、これにぶつけたようです。
最近、上演される機会が少なかったこともあり、CDもほとんど発売されていません。また、「あらすじ」などの情報も手に入りにくい作品です。そこで、今シーズンも上演されているので、ご紹介することにしました。
ここでご紹介する「フォルクスオーパー版」は面白い演出なので、余り有名な作品ではありませんが、機会があったら、ぜひご覧になることをお勧めします。

観賞にあたって

全員揃ってのカーテンコール

この作品は、いわゆる「伝説の世界」のお話ですから、舞台装置は抽象的なものになっています。場面が「お城の中」だけなので、回り舞台を上手に活用し、角度を変えることで、大広間や中庭に切り替えると行った仕掛けになっています。

衣装デザインは、近代的なものではなく、「その時代にふさわしい雰囲気」が出ており、ムードを盛り上げています。ところで、ブリュンヒルデは「アイスランドの女王」という想定なのですが、家来ともども、なぜかバイエルン地方の民族衣装で登場します(スカートは青と白のおなじみの模様です)。これは、ワーグナーに心酔していたバイエルン国王ルートヴィヒ2世にあやかっているのでしょう。女性兵士の帽子には羽がついているので、まさしくワルキューレです。

ところで、実質的には主役のジークフリートですが、実はフォルクスオーパー版では体格のよろしい歌手が起用されています。一般的にワーグナー作品の場合、声量と体力を必要とするため体格の良い歌手(ワーグナー歌手とも言います)が起用されますが、それとはちょっと雰囲気が違います。筋肉隆々の戦士ではなく、いわゆる「おデブ系」なのです。これもパロディなのでしょう。一見すると持てないようなおデブ系のジークフリートが、最後には自分の資産を分け与えることで、二人の美女に囲まれるという、今風のエンディングが面白いオペレッタに仕上がっています。

また、ウィンナ・オペレッタらしい「お色気ムード」も下品にならない程度にちりばめられています。とにかく「笑いの壷」を押さえた演出です。

主な登場人物

最前列は左からブリューンヒルト、ジークフリート、クリームヒント。二列目左が王様のグンター
  • グンター:ブルグントの国王(バリトン)
  • ウーテ:グンターの母(アルト)
  • ダンクヴァルト:グンターの父(バリトン)
  • フォルカー:王子、あだ名は「英雄」(テノール)
  • ギゼルハー:王子、あだ名は「巨人」 王子ですがオペレッタでは女性が演じます(ソプラノ)
  • クリームヒルト:王女、あだ名は「小令嬢」(ソプラノ)
  • ハーゲン:叔父、あだ名は「残忍ハーゲン」(バス)
  • ジークフリート:ネーデルランド出身の英雄、あだ名は「龍殺し」(テノール)
  • ブルーンヒルト:アイスランドの女王(ソプラノ)
  • ティッルエルとタッツェル:二匹の龍(普通は人間が演じますが、フォルクスオーパー版ではブルドッグが演じています)
    • オリジナルでは「擬人化した胃」が登場しますが、フォルクスオーパー版では設定されていません。

あらすじと見どころ、聴きどころ

オペレッタという観点から見ると、レハールやカールマンのように変化に富んだメロディーが使われておらず、同じような感じの曲(実際に同じ曲も多いのですが)が多用されています。途中、合唱団メンバーが多数参加する大合唱シーンがあるなど、明らかにワーグナー作品を意識した展開になっています。
本作品はお芝居の部分が比較的多いのですが、単純なお話なので、「あらすじ」さえ頭にいれておけば十分楽しめます。最もお芝居の部分についても、楽しい「小技」が一杯入っていますので、舞台を見ていて飽きることはありません。

1幕 ヴォルムスの城内

龍尾連れてジークフリートが登場

グンターの家族が食卓に集まっていますが、王様は悩ましげな表情で、一人玉座に座っています。皆が王様のお加減を心配し、それぞれが、おかしな忠告をします。王様は“実は頭痛の種はブルーンヒルトとの決闘のことなのだよ”と打ち明けます(この時、王は「青い鳥」のぬいぐるみを抱えており、いかにも頼りない感じを見事に表現しています)。

女王ブルーンヒルトは結婚を申し込む各国の王と決闘し、“自分が負けたら結婚する”と言っているのですが、これまで申し込んだ王や王子全員を負かし、殺してしまっているのです。一同は、相談の末、ジークフリートを呼ぶのが一番だという結論を出します。
クリームヒルトはその名を聞いてアリア「ロマンス〈ある目、クリームヒルトのために夢を見た EinsttrMlmte Kriemhilden〉」を歌い出します。この歌はなかなかいいですね。

ところで、王様の回りに一族郎党が集まってブルーンヒルト対策の話をしている時、給仕の皆さんが食卓の上に残っていたワインなどのお酒を、こっそり飲んでいる場面があります。要するに、この「頼りない国王グンター」を頂く「この国」では、酒でも飲んでいないとやっていられなよ‥というイメージなのでしょう。

龍に扮したブルドック君

やがてジークフリートが二匹の龍(ブルドッグの変装です。これがかわいい。なお、龍はこの場面しか登場しませんから、お見逃しなく)と共に、城にやってきます。ここでの聴きどころは、ジークフリートが歌う「登場の唄〈私が高校を出てから Ich bracht's aus dem Gymnasium〉」です。彼は、“自分は恐れを知らない清らかな騎士である”と自己PRを始め、グンター一家は、彼を丁重に迎え入れます。

グンター一家はジークフリートに有名な「龍殺し」のことをたずねます。ジークフリートは、“この商売は十年やっているけれど、なかなか大変な仕事で、競争相手も多く、出費も多い”と説明します。ずいぶん、現実的な説明ですよね。皆は、“でもラインの黄金の持ち主はあなたでしょう”とききます。これに対してジークフリートは、“確かに黄金はラインの河底の砂の中に埋めてあることになっているけれど、実はこの550万マルクの金貨は銀行に預けてあり、年利6%の利息がもらえる”と説明します。世俗的な(というか現実的な)騎士さんですね。当然のことながら、皆、それを聞いて大喜びします。

熱唱するジークフリート

実は、この場にクリームヒルトがいません。ウーテはクリームヒルトがいないので心配しますが、実は、彼女は英雄の出現にそなえて念入りに化粧をしていたのです。やっと支度ができたクリームヒルトが現れます。ジークフリートは、その美しい姿を見て一目惚れするのですが、どうも腹の底では女王の身分と持参金に期待をしている様子です。クリームヒルトも、ジークフリートが男前ではないので、彼の財産(銀行に預けてある550万マルク)に興味がある様子。ここでの聴きどころは、ロマンテイツクですが、現実的な愛の二重唱〈今日は、優しいお嬢さん Hei,gnädiges Fräulein〉です。

やがて執事がブルーンヒルトの到着を告げます。グンターは真っ青になり、“この危機を救ってくれた者には王国の半分をやる”と言い出す始末。すると、ジークフリートが、“私が助けましょう。私は隠れ帽子を持っていて、それをかぶると他人からは見えなくなるので、ブリューンヒルトを後ろから押さえてあげます”というアイデアを話します。そこにブルーンヒルトが女戦士(ワルキューレ)達を従えて城に入ってきます。グンターは、おびえて姿を隠そうとしますが、一族が“王たるもの、威厳を示してください”と強要するので、仕方なく決闘にのぞむことに…。

1幕のエンディング

広間の中に特設リングが設けられ、その中でグンターとブリューンヒルトが入り、素手による戦いが始まります(総合格闘技戦のような感じです)。リングアナウンサーとジャッジはハーゲンが務めます。城内にいる人々が観客という訳で、ハーゲンがブリューンヒルトを紹介すると、一斉にブーイングが出でます。逆にブリューンヒルトの部下達は、グンターに対してブーイングを行います。

最初はブリューンヒルトがグンターを圧倒しているのですが、姿を消したジークフリートが、後ろからブリューンヒルトを羽交い締めにして、そこへグンターが一撃を加え、グンター大勝利となります。この時、ジャッジであるハーゲンは、カウントを7から始めます。オペレッタらしい「八百長試合」ですね。
そして、グンターの一族と家来が勝利の合唱をし、幕となります(ここで休憩が入ります)。

2幕 城内の大広間

休憩中の舞台スクリーン

決闘に負けたブルーンヒルトはグンターの妻となります。一方、ジークフリートは、「勝利の報酬」としてクリームヒルトをもらい、城内では二組の結婚式が行われます。酒好きのドイツ人という想定なので、参列者は大広前で酔っぱらっています。

宴は終り、皆は大広間から去り、最後にクリームヒルトとジークフリートが「甘い愛の二重唱」を歌います。2幕、最初の聴きどころです。
クリームヒルトは、夫となったジークフリートに“龍の血を浴びて不死身となったときいているけれど、どうしてなの? シイの木の葉が落ちたところは血を浴びなかったときいているのだけれど、それはなぜなの?”といろいろと質問を浴びせます。ジークフリートは、答をはぐらかして、妻を連れて寝室へ行きます。

一方、グンターとブルーンヒルトは先に寝室に入っているのですが、ブリューンヒルトはグンターに“格闘ごっこやろう”とねだります(草食系のグンターに対して、ブリューンヒルトは肉食系です)。グンターは“王と妃がそんなことすべきでないよ”と取り合いません。ブルーンヒルトは、「格闘ごっこ」をしてくれない夫に愛想を尽かし、夫グンターをベランダに追い出してしまいます。ベランダに追い出されたグンターは、なさけない声でジークフリートに助けを求めます。

寝室から出てきたジークフリートは、グンターをベランダから下ろし、“何てみっともない”と軽蔑します。そして、ジークフリートは、“クリームヒルトが、私が不死身の理由を教えないので怒り、隠れ帽子を棄ててしまったから、もう助けられない”と言うのです。困ったグンターは、“それなら真っ暗な大広間で格闘してくれないかい”とジークフリートに頼みます。渋々、王の依頼に応えるジークフリート。

ブリューンヒルトの家来、ワルキューレ

グンターが寝室のドアをノックし、ブルーンヒルトを誘い出します。深夜の真っ暗な大広間で、ジークフリートがブルーンヒルトを押さえつけます。ブルーンヒルトは力で圧倒されておとなしくなり、“グンターを愛している”とジークフリートを抱きしめます。その時、グンターが物につまずいてしまい大きな音が響き渡ります! ブルーンヒルトは“いったい誰がいるの”と叫び、その声を聞いて、城中から一族や家来が集まってきて、大広間が明るくなります。

そこで、皆、ブルーンヒルトとジークフリートが抱き合っているのを見つけてしまうのでした。“何でこんなことに”と問うブルーンヒルトに、ジークフリートは“悪いのはグンターだ”と言い、グンターは“ジークフリートが悪い”と言い張り、自分の主張を譲りません。

今度は、グンターとジークフリートが決闘をする羽目になります。グンターは嫌がりますが、ハーゲンにけしかけられて、深夜の大広間での決闘にのぞみます。最初はジークフリートが圧倒するのですが、隙を突いてハーゲンが、ジークフリートの背中を叩きます。
実は、ジークフリート唯一のウィークポイントは、背中だったのです。ジークフリートは、背中からシイの木の葉を取り出し、がっくりと倒れます。皆が、ジークフリートの敗北をたたえる合唱を歌い幕となります。

3幕 城の中庭

暗転で、3幕へ入ります。舞台は翌朝の中庭です。朝食のためダンクヴァルト、ウーテとハーゲンが庭に用意されたテーブルに着いていますが、他の人が来ないので、少しいらいらしています。
ブルーンヒルト、ハーゲン、クリームヒルトが、三々五々、やって来ますが、唯一人ジークフリートだけが、龍の血を洗っているので、ここに来ません。

3幕のエンディング

ブルーンヒルトは“ジークフリートがこの城に居るのは絶対に嫌だ”と言い出します。かといってジークフリートを追い出せば、「ラインの黄金」も一緒に姿を消してしまいます。そこでハーゲンが、“それなら、今や生身となったジークフリートを殺害してしまおう”と提案します((ということは、この国は財政破綻寸前なのでしょうね)。クリームヒルトは、“たった一日で未亡人になるのは嫌だわ。でも、まだ他にも求婚者がいるから、皆のためなら仕方がないわね。いいわ”と薄情なことを言い出します。では何の武器で殺害するかという議論になりますが、結局、剣で殺ることになり、皆は輪舞を踊ります。この輪舞は面白いですね。

皆が、引き上げた後、ハーゲンは、ここで「彼の哲学」を歌で披露します〈フッ!フッ! わしは何もしらん Huh,Huh,lch weiß nicht〉。彼の人生哲学は結局、金、「ラインの黄金」の利息などを考えるのでした。

誰もいなくなった中庭にジークフリートが現れ、「私の妻はどうも貞節ではない」と歌い始めます。そこへ、小鳥(ソプラノです)があらわれて、彼に忠告をするのですが、面白い二重唱となります。
小鳥は“これはオペレッタだから、さして真剣に考えなくてもいいよ。でも、もし安心して過ごしたいなら、持っている株を少し売り、財産を少なくしておいた方が安全だよ”と忠告します。この当たりのお話、現代に通じるものがありますね。

そこへハーゲンがジークフリートを狙って背後から忍び寄りますが、小鳥がジークフリートに危険を知らせたため、難を逃れます。ハーゲンはジークフリートに全て見披かれたことを悟り、“申し訳なかった”と彼に謝ります。ジークフリートは“気にするな”と言って彼と握手をします。

それを見てブルーンヒルトは怒り出します。ハーゲンは彼女に“株の大暴落で資産は目減りしている上に、ジークフリートを殺せば、彼が投資している株が急落し、誰の得にもならないよ”と説得をはじめます。しかし彼女の怒りはおさまりません。困ったジークフリートは小鳥を呼び、どうしたものかと相談をはじめます。

中央がジークフリート

小鳥は“一番良いのは、ブルーンヒルトとブルグント一族に財産を分けてやることね。金さえやれば話はつくわよ”というアイデアを授けます。ジークフリートは小鳥の忠告通りにすることに決め、ブルーンヒルトに求愛し、一緒に寝室へ向かいます。そこで、お互いが愛情を確かめ合っている時、皆が集まってきます。
ジークフリートとブルーンヒルトが、寝室から出てきたところを、皆が迎えて、最後はクリームヒルトもジークフリートに抱きつき、全員で合唱をして幕となります。

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