ウィーンとオーストリア・ファンのためのポータルサイト

チャールダーシュの女王

オペレッタ・コーナーのトップへ戻る

チャールダーシュの女王 Die Csárdasfürstin

クリックすると大きくなります

エメリッヒ・カールマンが作曲したオペレッタの最高傑作と言っても良いでしょう。1915年にウィーンのヨハン・シュトラウス劇場で初演されました。
フォルクスオーパーの来日公演で取り上げられてから、日本でも有名になったオペレッタです。その後、本家、ブダペスト・オペレッタ・劇場を始め、多くのカンパニーが日本でも上演しています。現地のヨーロッパでもポピュラーなオペレッタの一つです。

2011年3月からフォルクスオーパーで再演が始まりましたが、演出に手が加えられ、新しい曲の追加、曲順の変更などが行われています。そのため、ここでご紹介した内容と、若干異なっている点をご了承願います。

チャールダーシュの女王」の魅力

チャールダーシュ」とは、ハンガリー音楽の一つのジャンルです。「酒場風」という意味ですが、作曲家ロージャヴェルジ・マールクの作った曲の名前から広まったと言われています。ちなみに「チャールダ」は、ハンガリーに古くからある宿屋兼居酒屋の名前です。チャールダーシュは、独特の躍動的なリズムが特長で、ハンガリーの民族音楽としても知られています。

このオペレッタは「チャールダーシュの女王」と謳われる美人歌手と、オーストリア貴族の息子エドウィンの恋を中心にした作品ですが、例によって身分違いの恋が成就するまでには、紆余曲折があります。オペレッタらしく「芯の強い自立心旺盛な女性と優柔不断な男性」という組み合わせです。

日本の皆さまには、「浪速の“演歌の女王”と、世間体を気にする山の手の大富豪のお坊ちゃまの恋」と考えるとわかりやすいかもしれません。ブダペストとウィーンの両方が舞台になっているため、チャールダーシュに代表されるハンガリー風の音楽に加えて、ワルツもふんだんに盛り込まれており、音楽的にも変化に富んだ楽しい作品になっています。

なお、「チャールダーシュの女王」は、「タイトルロールが歌手」というオペレッタでは珍しい作品です。そのため、「チャールダーシュの女王」ことシルヴァ役の出来が、公演の魅力を左右すると言っても良いでしょう。

ところで、カールマンのオペレッタは、「伯爵令嬢マリッツア」もそうですが、三幕になると、お話をまとめるためか、お芝居の比率が高まる傾向があります。この「チャールダーシュの女王」も、三幕は歌よりもお芝居が多い展開ですが、ここに“ヨイ ママン”という名曲が入っているので、退屈することはありません。

クリックすると大きくなります

主な登場人物

  • シルヴァ・ヴァレスク:「チャールダーシュの女王」と謳われる美人歌手、エドウィンの恋人(ソプラノ)
  • エドウィン・ロナルト:オーストリアの貴族レオポルト・マリア伯爵の息子(テノール)
  • ボニ・カンチャヌ伯爵:ハンガリーの貴族、シルヴァに思いを寄せている(テノール)
  • シュタージ:ウィーンの伯爵令嬢、レオポルト・マリア伯爵の姪(ソプラノ)
  • フェリ・フォン・ケレケス:ハンガリーの貴族で愛称は「フェリ・バチ」(“フェリおじさん”というニュアンスです)(バリトン)
  • レオポルト・マリア伯爵:リッペルトからヴァイラースハイムまでを治める領主(バリトン)
  • アンヒルテ:レオポルト・マリア伯爵夫人。その昔、ヒルダ・クップファーの名でミルコルツという地方の劇場で歌っていた元「チャールダーシュの女王」(メゾソプラノ)
  • オイゲン・フォン・ローンスドルフ男爵(中尉):エドウィンの従兄弟(バリトン)

「あらすじ」と見どころ、聴きどころ

オリジナルの設定は、第一次世界大戦前夜(1914年頃)のブダペストとウィーンが舞台です。ただ、オペレッタの場合、演出によって時代設定や舞台装置、お芝居の中身、曲順などが大きく変わります。
ここでは、今まで上演されていたフォルクスオーパー版を基本にご紹介します。

一幕 ブダペストのオルフェウム劇場

クリックすると大きくなります

一幕はシルヴァが出演しているブダペストのオルフェウム劇場(現在、ブダペスト・オペレッタ劇場があるところにあった劇場です)です。序曲が終わり、幕が開いた直後が「オルフェウス劇場でのシルヴァお別れ公演のフィナーレ」という設定なので、最初から聴かせどころアリア“ジューベンピュルゲンの娘”(ハイヤ、ハイヤ、山こそわが心の故郷)が歌われます。

つまり、最初からシルヴァにはパワー全開で歌う場面(想定としてはたくさん歌って、最後のアンコール的な位置づけです)が待っている訳です。この最初の曲を聴くとシルヴァ役の実力がわかってしまうため、シルヴァ役の歌手は気が抜けません。

通常、オペラやオペレッタの歌手は、公演の中盤から後半にかけて設定されている聴かせどころのアリアに向け、徐々に調子を上げていくようですが、それができないという訳です。カールマンも歌手に酷な展開を考えたものですね。

チャールダーシュの女王」は、本来、一幕が一場から六場まであるのですが、最近では「吊しもの」などを活用して場面転換を行うのが一般的です。その後、シルヴァが翌朝、アメリカに出発するまで、フェリ・バチとボニを中心とした常連客が飲み明かすことになります。このとき、歌われる“俺達みんな遊び人”“歌が上手な歌姫は…”は楽しい三重唱です。

クリックすると大きくなります

二場では、シルヴァの恋人エドウィンが遅れてオルフェウム劇場にやってきます。エドウィンは劇場のロビーで、外されたシルヴァの看板を前に“素敵な女性よ”を歌い、楽屋へやってきます。そして、シルヴァに自分の気持ちを打ち明けるのです。この場面で歌われるシルヴァとエドウィンの二重唱“好きなるのは、よくあるが”が二人の心理をよく表しています。

そこへ、フェリ・バチとボニが楽屋へやってきて、身内のパーティーが始まります。エドウィンの気持ちを知り、アメリカ公演にでかけるのがおっくうになってしまったシルヴァ。そんな気持ちを表現した名曲が“幸せは遠くまで追ってはダメ”という四重奏です。このあたりは、テンポ良く場面転換が行われ、一気呵成に物語が進んでいきます。

そこへ、エドウィンをウィーンに連れ戻すためにオイゲン中尉がやってきます。オイゲン中尉とボニ、フェリ・バチが、オペレッタらしいやり取りを見せる場面です。

実は、エドウィンの父レオポルト・マリア伯爵は、エドウィンに家柄にふさわしい女性シュタージと結婚させようと考えています。そこで、エドウィンを「召集令状」によりウィーンへ連れ戻し、婚約式を行うことを画策しているのです。

クリックすると大きくなります

もともと優柔ふんだんなエドウィンは、シルヴァにプロポーズできずに時間だけが過ぎていました。しかし、軍人であるエドウィンは命令には逆らうわけにはいきません。逆にこの出頭命令が優柔不断なエドウィンに決断を促すことになりました。

踏ん切りが付いたエドウィンは劇場に公証人を呼び、8週間のうちにシルヴァと結婚する約束を書面にまとめ、彼女のアメリカ行きを断念させます。一幕では最も盛り上がる劇場関係者やひいきのお客さまから祝福される場面です。

エドウィンがウィーンに発ったあと、ボニがオイゲンから手に入れたエドウィンとシュタージの婚式揮案内状をシルヴァに見せます。落胆したシルヴァは、やけになってアメリカへ旅立っていきます。幸せの絶頂から、奈落の底へ。このとき歌われる“恋は甘い天国、甘い地獄”はシルヴァの気持ちが表現された名曲です。

一幕の最後、一人劇場に残ったフェリ・バチが、シャンペングラスを床にたたきつけ、シルヴァの不幸を嘆くシーンが、何とも言えません。

二幕 ウィーンのレオポルト・マリア侯爵の館

クリックすると大きくなります

二幕は、ウィーンのレオポルト・マリア侯爵の館です。レオポルト・マリア伯爵が、息子エドウィンとスタージの婚約発表のパーティを間いているところから始まります。舞台は、一幕の劇場とは打って変わって、大邸宅の大広間です。フォルクスオーパー版では、照明を工夫することで、舞台に変化をつけています。

エドウィンは、アメリカヘ行ってしまったシルヴァの本音がわからず、悩んでいます。彼はシュタージに「大切な連絡を待っているので、今すぐに婚約はできない」と告げるのですが、シュタージもエドウィンが歌姫シルヴァに恋をしていることを、薄々感じています。ここでエドウィンとシュタージの気持ちを表現したデュエット“燕にあやかって”が歌われます。一幕のチャールダーシュとは打って変わった美しいメロディーのワルツです。

そこヘシルヴァが、何とボニを連れてと現れます。二人の婚約記念パーティに潜り込むため、シルヴァは形の上ではボニ夫人となって登場します。ボニ夫人として紹介され、慌てるエドウィン。

クリックすると大きくなります

一方、ボニはシュタージに一目惚れ。「オペレッタらしい複数の恋物語」が始まります。ボニとシュタージのデュエット“ハイマシ・ペーターとパウル”が楽しい雰囲気を盛り上げます。

二幕のハイライトは、エドウィンとシルヴァのデュエット“踊りたいの”でしょう。また、ボニとシュタージのデュエット“それが恋”も楽しい曲です。

結婚したくても、身分(要するに世間体)が邪魔をしてウィーンでは、シルヴァに結婚を迫れないエドウィン。いかにも、優柔不断な坊ちゃんという感じです。

クリックすると大きくなります

ところがシルヴァがボニと離婚すれば、立派な元伯爵夫人。そこで、エドウィンは「ボニと分かれてくれ。そうすれば、君は元伯爵夫人だから、結婚も問題ない」とシルヴァの気持ちを逆なですることを言い出します。

エドウィンの態度に怒り心頭のシルヴァは、「私は“チャールダーシュの女王”に戻るわ」と皆の前で宣言し、ブダペストで書いた「結婚を約束した書面」を破り捨て、ボニと一緒に立ち去ります。最後、シルヴァがエドウィンに駆け寄り、キスをして公爵邸を後にする場面に、シルヴァの女心が良く現れています。

三幕 ウィーンのグランドホテル

クリックすると大きくなります

二幕で大きな溝ができてしまったシルヴァとエドウィン。このもつれた糸を、どのように解きほぐすかが三幕のテーマです。もちろん、オペレッタらしい「仕掛け」が随所にちりばめられています。

三幕は、ボニとシルヴァが泊まっているウィーンのグランドホテルのバーが舞台です(そう、以前、日系の某航空会社が運営していたリンク沿いにある「あのグランドホテル」です)。すでにバーは閉店の時間なのですが、ボーイ長マックスを抱き込んで、貸し切りにしています。

シルヴァは、すぐにカッとなってしまう自分に落ち込んで戻ってきます(さすが情熱的なハンガリー女性です)。そこへ、オルフェウム劇場の歌手たちのウィーン公演についてきたフェリ・バチが登場。

フェリ・バチは、事情を聞きシルヴァを慰めるため、バンドを呼んで“ヨイ ママン”を歌います。この舞台上のバンドは、通常、オーケストラメンバーが担当しており、実際に演奏します。

最初は、乗り気ではなかったシルヴァも歌姫の血が騒ぎ、結局、歌の輪に入り、三人で盛大に歌いまくります。まさに「チャールダーシュの女王」モード全開です。“ヨイ ママン”では、通常、派手に踊りながら歌うためシルヴァ、ボニ、フェリ・バチには「歌役者としての高い技量」が求められます。

クリックすると大きくなります

チャールダーシュの女王」と言ったら“ヨイ ママン”。最大の盛り上げどころなので、最近では少なくなったリフレイン(繰り返し)も盛大に行われます。

現在、フォルクスオーパーで上演されているバージョンでは、最初はドイツ語、二回目はハンガリー語、三回目は英語と日本語(日本語の歌詞は“世界はボクのもの。いつまで生きるかわからない。金などいるものか”という凄いものです…)となっています。この日本語ですが、恐らく、来日公演の際に入れたものを、その後、現地、ウィーンでも継続しているものと思われます。

なお、“ヨイ ママン”は、当日の状況で、繰り返しの回数が増える場合もあります。ところで、この曲、“Jai”はハンガリー語のかけ声なので、“ヘイ! ママ(お母さん)”といった意味になるようです。

この後は、いかに二組のカップルを上手にとまとめ上げるかという「お芝居」になります。「お芝居」なので、台詞(フォルクスオーパーの場合はドイツ語)が多くなりますが、実は、このお芝居が面白いのですよ。あらすじがわかっていれば、十二分に楽しめます。

まず、エドウィンがシルヴァを説得するため、グランドホテルやってきて、ボニに「シルヴァをなぜ自分の妻だと言ったのだ」となじり倒します。ところが、両親が来たため、エドウィンは姿を隠します。

「息子が自殺するのでは…」と心配した父親レオポルト・マリア伯爵夫婦がやってきて、ボニに詰め寄るのですが、エドウィンと同じような仕草なので、ボニは「この一家は、病気か」といったジョークを言って、観客を盛り上げます。ここで、侯爵夫人はフェリ・バチとはち合わせ。

そう、公爵夫人は昔、ミスコルツの歌姫として活躍していたこと、さらにフェリ・バチの恋人だったことがわかります。伯爵夫人の秘密がばれたときのレオポルト・マリア伯爵のリアクション(狼狽ぶり)が見所です。結局、伯爵は自分自身が身分違いの結婚をしていたことから、息子エドウィンとシルヴァの結婚を認めることを決めます。

さて、そこへシュタージが現れ、ボニとの結婚を承諾します。ボニとシュタージのデュエット“それが恋というものさ”は、二人の喜びが表現されていて、本当に楽しい曲です。

クリックすると大きくなります

シルヴァをあきらめかけているエドウィンに対して、ボニは「シルヴァの本音を聞かせてやる」と大見得を切ります。そして、ボニは電話を使って「自殺しそうなエドウィンを電話で引き留める大芝居」を打ち、シルヴァから「やっぱりエドウィンなしでは生きていけない」という本音引き出すのです。

ここで、陰に隠れていたエドウィン本人が登場。二組のカップルが無事誕生してお開きとなります。

最後のシーンは、シルヴァとエドウィン、スタージとボニ、リッペルト侯爵夫妻が、それぞれカップルで、踊る中、フェリ・バチ一人が、見えない相手をパートナーとして踊る場面になります。ちょっと、ホロッとくるシーン。でも、フェリ・バチは粋なオヤジですなぁ(こういった「粋なところ」が好きなのですよ)。

a:4619 t:3 y:12

オペレッタ・コーナーのトップへ戻る

powered by Quick Homepage Maker 4.27
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional